パン屋の経験が活きたおはぎづくり
もともとものをつくることが大好きで、サザエに入社する前は長らくパン屋さんで働いていました。サザエに転職したのは、深夜勤務だったパン屋さんから日中の仕事に変えたいという思いで仕事を探していたところ、求人情報を見つけたのがきっかけです。北海道で生活するなかでサザエは身近な存在ですし、以前からサザエのきなこのおはぎが大好きだったので、応募することにしたんです。
入社したばかりの頃は、それぞれの調理方法について、先輩方から丁寧に教えていただきました。みなさんテキパキと仕事をされているのがとても印象的で、先輩たちのいいところをそれぞれ自分なりに取り入れながら、つくり方を習得していきました。おはぎづくりに関しては、もち米にあんこを乗せる工程が、パン生地の上にクッキー生地を乗せるメロンパンのつくり方と同じ手法だなと思い、自分のなかで「メロンパン製法」と呼んでいました(笑)。
接客の言葉に想いを込めること
サザエには「いらっしゃいませ」「はい、かしこまりました」「少々お待ちくださいませ」「ありがとうございました」「またお越しくださいませ」の接客5大用語があり、毎日の朝礼で唱和するようにしています。店舗では販売スタッフの「いらっしゃいませ」という声が聞こえたら、製造のスタッフも必ず復唱するようにしていて、厨房の中にいてもお客様の姿が見えたら声を出し、山びこのように接客用語を店内で繰り返しています。
ところが、以前勤務していた店舗で働いている時に、あるお客様から「いつも決まったことしか言えないのね」と言われてしまったことがありました。いったいそのお客様はどんなことを私に伝えたかったんだろうと、しばらく考えていたところ、きっと接客の言葉に気持ちが入っているのを感じられなかったんじゃないかと思ったんですね。5大用語は私たちの接客の基本ではあるものの、そこにスタッフの想いがなかったらまったく意味がないんだと、その経験を通して痛感しました。あくまでこの5つの言葉がサザエの接客の基本ではあるんですが、その経験があってからは、お客様の状況に合わせて「またのご利用お待ちしております」「お気をつけてお帰りください」など、自分なりの言葉でも接客するようにしています。
店長の笑顔が働きやすい環境をつくる
店舗での経験を数年積んでから、当時の上司から「谷岡ならきっと店長ができると思うよ」と言っていただき、まずは副店長を務めることになりました。そこでシフトの作成や日々の計画、発注などをさらに深く教えていただき、毎日の積み重ねにより無事に店長になることができました。自分がお店のなかでいちばん上の立場になり、最初は右往左往することもありましたが、店舗のみなさんに支えられながら少しずつ店長の仕事に慣れていくことができました。今もまだまだ道の途中なのでみなさんに支えられていて、感謝の気持ちでいっぱいです。
店長になってから心がけていることは、お店が忙しくなってきても笑顔を絶やさないこと。人って忙しいと周りが見えなくなってしまいがちですが、そういう時ほど笑顔を意識するようにしています。店長がそうしていれば、スタッフのみんなも笑顔になります。口に出して注意するよりも、私が落ち着いていればみんなに伝わりますし、私に合わせて落ち着いて働いてくれているみんなの様子を見て、ちゃんとわかってくれているんだなと感じることができます。もちろんスタッフに注意しなくてはいけない時もありますが、伝えたいことが済んだら「この話はおしまい、もう触れません」と言って、切り替えるようにしています。そして自分がなにか間違えた時には、きちんとスタッフに謝ります。
また、店長としてはまずはスタッフのことを知り、みんなと打ち解けていないといけないと思っています。人と接する仕事をしている上で、お客様だけではなくスタッフも私の宝物なので、どちらも大切にする必要があります。そしてお店の一体感をつくるためには、とにかく話すことが大事だと思うんです。仕事について話すことはもちろん、何気ない会話もできる環境づくりを普段から意識しています。やっぱり店長の手腕によってお店の質は変わりますし、みんなが働きやすい環境をつくることが店長の仕事で、この仕事のやりがいはまさにそこにあると思います。
宮の森本店のみんなは本当にいつも笑顔で、私がなにかを教える必要がないくらい、ものをつくることが好きで、接客も素晴らしいです。みんなただサザエのことが好きで、自分たちのお店のことが好きなんですね。そうじゃないと、きっとあんなにいい笑顔で働けないんじゃないかなと思います。
1日の24時間のうち、睡眠時間を除くと家で過ごしているよりも仕事している時間のほうが長いですよね。だったら、毎日自分の好きな仕事をして楽しく過ごす方がいいと思うんです。私が10年以上サザエの仕事を続けてこられたのは、サザエのことが好きで、周りのみなさんの人柄が素晴らしいからだと感じています。周りの方々のおかげで、今の自分があります。
もちろん、売上などの数字を求められることもありますが、決してそれが仕事のすべてではなく、お店をもっともっと良くしたいというスタッフのみんなの気持ちが大切です。仕事のなかで大変なこともあるかもしれませんが、いつもみんなが笑顔で仕事ができていれば、「今日も一日頑張った」「また明日もよい一日でありますように」と思うことができます。そういったみんなの想いがお客様にも伝わると信じ、日々楽しく努力しているからこそ、結果的に成績にもつながっていくんだと思います。
想いをのせれば、おいしい商品はできる
私が店長を務めている宮の森本店では、販売と製造のすべてをみんなで担当するので、お客様が来店されましたら、笑顔でお迎えしての接客はもちろんのこと、おむすび、おはぎ、巻き寿司などの製造も店内厨房にておこなっています。忙しいとは思いますが、その分やりがいがあると思いますね。
サザエの商品は種類が多いですし、仕事がたくさんあるんですが、最初は上手くできなかったとしても、ひとつずつ仕事を覚えていき、できることが増えて上達していくにつれて、仕事の楽しさがもっと広がっていくと思います。お会計の際に「この前買った〇〇おいしかったよ」「ありがとう」「ごちそうさま」といった一言を伝えてくださるお客様もいて、直接お客様からお言葉をいただけるので接客業としてのやりがいを感じますね。
これまでいくつかのお店を経験し、接客の姿勢や人柄、商品を綺麗につくりたいという想いなど、私から見ても本当に素晴らしいと思うスタッフの方々がたくさんいて、そういった方々と仕事できることが本当に楽しいです。おいしい商品は想いをのせるからこそできるんだなと、そんなスタッフたちと話をしていて思います。それは私が以前勤務をしていたパンづくりにおいてもそうですし、一匹のお魚を焼くだけでもきっとそうで、一人一人の気持ちの持ち方だと思います。そういったスタッフたちと一緒に、新しいサザエの店舗をつくることが私の夢です。