販売の楽しさを知った「十勝大名」での経験
入社する前からサザエのおはぎに馴染みがあったわけではなかったのですが、学生の頃に北海道コンサドーレ札幌の応援によく行っていて、サザエがつくっている「コンサドーレ必勝弁当」をいつも買って食べていました。サザエはコンサドーレのクラブパートナーで、北海道の人なら誰でも知っている企業ですし、就職活動をはじめる際に、漠然と自分の好きな北海道コンサドーレ札幌に関われる仕事がしたいなと思っていたのが、サザエの新卒採用に応募した理由です。
もともとは父親が食品を取り扱う仕事もしていて、自分も食べることに興味があったので、将来は食に関わることがしたいなと漠然と考えていたんですね。自分は札幌で生まれ育ち、北海道が大好きなので、できれば地元で就職したいとも思っていました。
当初は営業職として入社したのですが、まずは接客と販売の経験を積むために、うす皮たい焼を販売する「エスタ十勝大名」に配属されました。店頭でたい焼を焼きながらお客様の顔を見て仕事をしていた当時の経験は、いまでもさまざまな場面で活きていると思います。
特に印象的だったのが、ほぼ毎日買いに来てくれていたお客様の存在ですね。いつも開店してすぐに来店され、「焼きたてのあたたかいのをちょうだい」とおっしゃっていたので、そのうちお客様の姿が見えたら注文を受ける前に用意するようにしていました。すると、このお店は自分のことをわかってくれているんだと感じていただけたようで、他のお客様にお店のことを紹介してくれたんです。販売の仕事にはそういった楽しさがありますし、あの頃の経験があったからこそ、常にお客様の立場になって考えることができているように思います。
スタッフのやる気を引き出し、数値の達成を目指す
3年ほど店舗経験を積んでからは、本社勤務の営業部として、卸売先のお客様の対応や弁当の電話注文の受付、物産展といった催事への出展を担当することになりました。イベントでのケータリングや、北海道コンサドーレ札幌が厚別公園競技場で試合をする際にお弁当を販売することもありましたね。
2010年からは複数のお店を管理するスーパーバイザーを担当することになり、仕事の内容は大きく変わりました。店舗の利益を上げるための数値管理はもちろん、店長や店舗のスタッフとの接し方のバランスに悩む場面もありましたね。あまり強く言いすぎてしまうと逆効果ですし、かといって優しく接しすぎてもよくないので。会社としての指示をそのまま伝えるのではなく、いかにスーパーバイザーとしてみんなのやる気を引き出していくかを考えながら仕事に取り組んでいきました。
年末や節分などの大きな売上を出すイベントにて、自分の担当していたグループ全体で目標を達成することができたときの達成感は大きかったですね。店舗同士で連携しながら、目に見える結果としての数字が得られた時にはやっぱり嬉しかったですし、スーパーバイザーの仕事のやりがいを感じることができました。
大きな転機となったISHIYAグループへの参入
2015年にサザエがISHIYAグループの一員になったことは、自分自身のキャリアにとって大きな意味を持つ出来事でした。それまでのサザエでは、基本的には同じ部署の仕事を続けるような働き方でしたが、2022年にISHIYAの石水社長がサザエの社長も兼務するようになり、ISHIYAから出向されてきた方が各主要部署に配属され、ジョブローテーションといった新しい取り組みがはじまりました。さらに、紙で管理していた資料のペーパーレス化や、ノートパソコンの支給、会議室へのモニターの導入など、会社のシステムにも大きな変化がありました。投資すべきところにはちゃんとお金をかけていこうという意識が生まれてきたのもこの頃でしたね。社内ではよく「平成を飛び越えて、昭和から令和の働き方になったね」といったことを話しています。
最近ではサザエからISHIYAに出向するスタッフも増え、人事交流を通して会社同士のつながりが生まれてきていると思います。マーケティング勉強会などを共同で開催することもありました。出向されてきた社員の方々は、サザエで働くのを楽しんでいるようで、みなさんサザエのことを好きになってくれています。
現在所属している商品部では、ISHIYAはもちろんのこと他社とのコラボ商品の企画を担当することもあります。たとえば、以前開発したキャラクターとのコラボレーション商品では、ゼロから型からつくる必要があり、キャラクターとしての完成度はもちろん、サザエの商品としてのおいしさと品質が求められました。たい焼の場合は真ん中にあんこを入れるだけでいいのですが、キャラクターの型はかたちが複雑なので、あんこが綺麗に収まるようになるまでには苦労がありましたね。その分、仕上がった時の達成感は大きかったです。
リブランディングを経て、さらなる挑戦へ
2023年からはリブランディング事業室のゼネラルマネージャーとして、エイトブランディングデザインのみなさんと一緒にリブランディングプロジェクトに取り組みはじめました。これまでサザエは自分たちの力でなんとか頑張ってきたんですが、会社として大きく変わるためには、外部のパートナーと一緒にリブランディングに取り組まなくてはならないと、石水社長の大きな決断によってスタートしたプロジェクトでした。
サザエはずっとおいしいものをつくり続けてきましたし、自分たちの仕事に誇りを持って働いているのですが、ブランドとして適正な価値でものを売ることができていなかった面もあったと思うんです。石水社長としても、自分たちのブランドを安売りしてしまっているのではないかと、日々感じるところがあったようです。プロジェクト当初は、自分も含めてスタッフの多くはリブランディングと言われてもピンとこないような状態だったのですが、2年弱の期間をかけて、みんなで同じ方向に歩んでいくための考え方を統一していきました。
2024年10月に無事にローンチすることができましたが、まだまだできていない部分もありますし、これからもブランディング活動を継続していくためには、社内の仕組みづくりも必要だと思います。創業者の野村とみがつくったサザエ食品のいいところを守り、さらによくしていくためにはどうすればいいのか、商品部のブランディングチームとして考えていきたいですね。
ISHIYAグループの一員になってから、自分たちで考えて行動する文化がサザエの中で根付いてきている気がしています。リブランディングを経たこれからのサザエには、新しいことにチャレンジができる人、自らアイデアを発信できる人が必要です。営業職として入社してきた自分が、気づいたらスーパーバイザーや商品企画、さらにブランディングを担当することになったように、サザエではいろんな経験を積むことができると思います。現在のブランディングチームは入社1、2年の若いメンバーも登用し、新しいサザエをつくっていくために日々アイデアを出し、さまざまな取り組みをおこなっています。自分もブランディングチームの広報としてサザエのことを伝えるべく人前に立つことも多くなり、毎日楽しく働くことができています。これからももっといろんなことに挑戦していきたいですね。